終身雇用制度考察

終身雇用制度は、時代の空気の変化に大きく押し流さてきた。私が大学を卒業してはじめてサラリーマンになったのは1986年であるので、四半世紀前ということになるが、その時点では間違いなく終身雇用制度は息づいていた。自分自身の意識を振り返ってみても、新入社員時代にはおそらく一生この会社にいるだろうと信じていたと思う。当然その時代にもサラリーマンを辞めて独立転進という道を歩む人はいただろうが、それはマイノリティだったと思われる。思えば、「脱サラ」という言葉が良く使われたが、まさにマイノリティだったからこそ存在した言葉だろう。(今日的にはほとんど使いませんよね。)

終身雇用制度については、プロ野球でもその変遷を窺うことができる。代表的打者の所属球団変遷を見てみる。歴代でアベックホームラン最多は勿論ON砲の王、長嶋だが、ONは昭和40年代の代表格。歴代2位はカープの山本浩二、衣笠のYK砲で、こちらは昭和50年代。そして歴代3位はライオンズの秋山、清原のAK砲で、これは平成の代表ということになろう。ご承知の通り、ONは選手時代はジャイアンツで、山本、衣笠もカープで全うする。昭和はそれが当たり前だった。雇用流動性の高いプロ野球でもそうであったのだ。ところが、平成になってから球界でも空気が変わる。AK砲はライオンズに最後まで留まらなかった。秋山はホークスに、清原はジャイアンツにそれぞれ移籍することになる。そして時代はそのことに違和感を感じなくなっていったのである。今日、イチローや松井がメジャーリーガーになっているのも、根底ではこうした空気の変化に負うところがあると思う。

サラリーマンとプロ野球は全然別ということをおっしゃるかもれないが、そうではない。時代のバックボーンとしての空気は一緒だ。こうした世間の価値観の変化は我々個々人の生活に目に見えない影響を及ぼしている。今日の雇用情勢についても背景の一つとしてはこうした変化がある。こうした時代の空気の変化に対して法はどう対応しているのか。次回はそのことを考えてみる。