古い組織と新しい組織③

三越という企業の歴史を見ると、昭和30年代から40年代が一番の隆盛期だったのだと思う。その礎を築くプロセスについては、前項(古い組織と新しい組織②)で触れた。この時期は、企業としてもだが、百貨店という業態自体が一番ピークであったということも背景にある。

この時代一人の社長が比較的長い期間在職をしていた。戦時中から社長となった岩瀬英一郎は、20年の長きに亘り社長を務めた。続く松田伊三雄も約10年という在職期間であった。実に2人で30年。この30年間で三越は急成長をしていく。

松田の後を継いだのは岡田茂である。一定以上の年齢の方であればご存じだと思う。「なぜだ」と叫んで解任されたエピソードはあまりにも有名である。岡田茂も10年近く社長をやっている。岡田はもともと宣言マンであった。マスコミを巻き込んだセールスプロモーション戦略は大変優れていた。しかしながら、近代経営者としての基本姿勢を理解しておらず、倫理観が大きく欠如していた。結局岡田解任前後数年で、三越は業績を悪化させていく。

振り返れば、結局この3人が計40年かけて経営した期間には、その前時代にあったような革新的な取り組みはなかった。そして、後半(岡田時代)には、組織が腐り始めるのである。これはある意味で自然な流れなのだと思う。長い時間が経ち、そこで革新行動がなければ、あとは老化していくのみである。企業としての寿命が長いほど、カンフル剤としての革新行動が必要となる。しかし、時間が長いほど、組織の老化が始まり革新行動は起こりづらいくなる。ここに古い組織のかじ取りの難しさがある。

次回は、「組織の老化」ということを考えていきたい。