穴八幡宮

正式名称は高田八幡宮という。なぜ穴八幡宮というかといえば、横穴式の墳墓のようなものがあるからで、この横穴は子供のころ、穴の手前が柵になり進入できないようになっていたが、怖いもの見たさで中に入ってみたいと念じたものである。得体の知れぬ未知の世界がそこにあった。最近はなぜか目にすることがなくなった。

この穴八幡名物は、冬至から節分までの間に頒布される一陽来福というお札だ。これを家に持って帰り、恵方と呼ばれる方角に向けて壁などに貼っておくと、金まわりが良くなるというもの。若いころは、そのなものと信じていなかったのだが、40歳を過ぎてから試しにとやってみると、これがやめられない。毎年お札を貰ってこないと気持ち悪い。効用があるのか否かは分からないが、何となくそんな気分にはなる。神社の戦略に完全にハマってしまった。

ところで、この神社は、ちょうど早稲田大学の本部キャンパスと戸山キャンパスの中間に位置をしているので、早稲田大学のOBは大概穴八幡を知っている。もう先、テレビの対談で五木寛之が、インターネット難民というテーマに関連して、早稲田の学生時代に下宿屋に家賃が払えなくなり、しようがないので下宿を出て、数か月穴八幡で寝泊りをしていたというコメントをしていた。今は大手の建設会社が作った立派なお社だが、以前は木造の古い建物だった。あそこで寝泊りする学生の姿は今やちょっと想像できないが、戦後の時代にはそれも風情のある光景だったのかもしれない。