馬場下小倉屋

早稲田駅の付近を馬場下という。高田馬場の坂の下側なのでこの地名がついたものと思われる。

この馬場下の交差点に「小倉屋(こくらや)」という酒屋がある。今はファザードも洋風でしゃれた感じになっているが、昔はいかにも酒屋らしい店構えだった。この小倉屋は歴史上の人物といささか関係がある。その人物とは、あの忠臣蔵の中で、大石内蔵助の次に有名な登場人物、堀部安兵衛その人だ。忠臣蔵ドラマの前半で必ず出てくる堀部安兵衛の「高田馬場の仇討」、あの有名なシーンで安兵衛が、仇討の場に出向く直前に酒屋で一杯ひっかける場面を覚えている方も多いと思う。その酒屋が小倉屋なのだ。そのとき安兵衛が飲んだ升がどうも今でも小倉屋に残っているらしい。私の亡くなった伯母は小倉屋さんの家族の方と小学校の時同級生で、遊びに行ったときにその升を見せてもらったということをよく話していた。忠臣蔵は17世紀の後半であるので、三百有余年の年月を経て、今日に至った貴重な升である。

因みに、仇討の場所となった高田馬場は、今日の高田馬場駅の当たりからは、かなり早稲田よりの水稲荷神社境内付近にあった。馬場下からこの水稲荷神社までは、八幡坂を上って500~600メートルといったところなので、たとえ坂でも(かなり急だが)一気に駆けていくことは十分できる距離である。