今年(令和7年)の春闘は、大手では昨年に引き続き5%を超える賃上げ率となり、バブル経済期以来30数年ぶりの高水準を維持する結果となった。また、初任給相場についても、大手企業では、大卒で30万円前後を意識された展開となり、労働市場のヒートアップ感は激烈なものとなっている。大卒初任給相場については、長らく20万円台を推移してきたのだが、令和3年に21万円台(平均値)に乗っかり、その後、あれよという間に25万円の攻防という話となり、そして、今年には先頭集団で更に5万円程度持ち上がりをみせるという推移となっている。
このように初任給が急激に高騰してきたひとつのきっかけはNTTがつくった。NTTは令和4年には大卒初任給が21万円9千円だったところ令和5年で25万円にまで持ち上げた。これは、グローバル化の進展により、特に理系学生が欧米の企業に高値で持っていかれてしまうという危機感から、その阻止に向け一気に攻めに転じたことによる。この「NTTショック」により、理系の技術職を必要とする大手製造業がこれに追随した。こうした流れはその後加速度をつけていき、高卒初任給も含めて、初任給相場の全体的な高騰につながってきている。
ところで、初任給が30万円前後ということになると、既存の賃金体系との整合性をキープすることは非常に困難になってくる。本来的に言えば、初任給額というものは賃金テーブルの初号俸に相当するものだ。しかし、現在では多くの企業で、初任給テーブルを、賃金テーブルから切り分けて運用している。であるとしても、2年目の社員、3年目の社員との相関関係からみた場合、初任給額(新入社員の給与額)が高くなる際には、既存の給与額も補正しないと逆転現象が起きることになる。この逆転現象は既存の社員のモチベーションにも悪影響を及ぼす。とはいえそれを解消するためには、多大な人件費の増額が必要となるので、ここまで急騰してくると現実的には不可能となってくる。
ではどうするべきか。その解としては、「職務給への転換」しかないと思われる。最近では一部の大手企業で職務給に転換する方針が出ているが、まだ多くの企業は、年功的、職能給的な体系を引きずっている。現実としてわが国では職務給は昔からその有用性は唱えられてきたものの、きちんと導入できた企業は(外資を除いて)極めてマイノリティだった。しかし、ここまで初任給額が急騰すると、上手くいくかどうかはともかくとして、形態上で職務給にせざるを得ないのだと思う。なお、職務給に関する課題については、改めて別の項でご案内したい。



