雇用調整の具体的な進め方

段階別ワンポイントアドバイス

雇用調整の進め方としては、リスクの低いところから高いところに段階を踏んでいくのが常道です

時間外調整

時間外調整は、雇用調整をする前段階として、必ずしっかりと取り組む必要があります。ここが疎かである場合には、リストラの回避努力義務を認められない可能性が極めて高まります。取り組み方の詳細は「労働時間効率化コンサルテーション」を参照ください。

有期契約労働者、派遣社員の雇用調整

時間外削減も限界となった場合、次にくるのは、正規従業員以外の労働者に対する雇用調整です。通常はまず派遣社員の契約終了を先に行い、そのあと有期契約者の雇い止めに移るものと思われます。ここで注意が必要なのは、派遣社員と有期契約労働者は、法的には全く別次元のお話だということです。派遣社員は派遣先企業にとって労働契約ではありません。あくまでも派遣元企業との契約であり、契約期間が終わればそのあと継続しなくてもなんら問題はありません。(ただし一定年数を経過するといくつかの制約は発生します)
一方、有期契約労働者は企業として直接、労働契約を結んだ相手ということになります。従いまして、雇用調整を掛ける場合、会社として主体的に責任ある対応をしなければなりません。特に、一定回数、労働契約が更新されているときは、正規従業員を解雇するときとほぼ同じ意識をもって慎重に対応する必要がでてきます。

一時帰休

正規従業員を一時帰休させる場合には、給与の60%相当以上の休業手当を支払わなければならないことが法律で決められています。従業員には働かせずにこの手当を支給するのですから会社にとってかなりの負担となります。この負担を国が助成する仕組みとして、「雇用調整助成金」があります。条件が当てはまれば必ず活用しましょう。

希望退職、退職勧奨

多くの企業は、整理解雇になる前に、退職金の上積みなどをして退職の誘導をする、いわゆる「希望退職制度」などを実施します。この際、「この会社に残ることよりも新天地を求めては?」という形で退職を勧める「退職勧奨」を行うことがあります。人的リストラという言葉はいろいろな意味で使いますが、もしかしたらこの退職勧奨のことを指す場合が一番多いのかもしれません。
退職勧奨は、大変ナイーブなテーマであり、取り扱い方を一つ間違えると、解雇と捉えられることにもなります。言葉の使い方に細心の注意を払いながら会社の意思を伝えることが大切です。

整理解雇

日本は、外国に比べて整理解雇がしづらい国だと良く言われます。整理解雇をするには過去からの判例があり、4つの要件が必要と言われています。4つとは、1)整理解雇の必要性、2)回避努力義務、3)対象者の人選の妥当性、4)従業員との対話努力など手続きの妥当性、です。こうしたことから整理解雇のハードルは非常に高いものとなっています。ただし、最近の判例の傾向には変化が見られ、要件は4つすべてが揃っている必要はないという考え方になってきているようです。とはいえ整理解雇をするとすれば、4要件を意識せざるを得ないということに違いありません。

※以上、提示した段階は、第一段階が済んだら第二段階に進むという性質のものではなく、状況によっては、3つの段階を並行して取り組んでいくということも考える必要が出てきます。