副業について

新型コロナ感染問題により、「副業・兼業」というものがクローズアップされてきた。副業は、それを認めると精力の拡散、情報漏洩など様々な問題が生じることから、多くの企業が禁止としてきた。公務員については、今日でも原則として副業は禁止である。これが第二次安倍内閣における「働き方改革」で副業促進ということがテーマとして挙げられてからは、副業をポジティブに捉える流れが出来つつあり、さらに新型コロナ感染問題で、出勤を制限する中、労働者の生活保全の一環として、実質的に副業を認めざるをえないと判断した企業が多数出てきて、「副業解禁」という言葉が、まことしやかに使われるようになってきた。
この副業、民間に限ってだが、そもそも法律では一切禁止などされていない。むしろ憲法第22条の「職業選択の自由」からすれば、副業は基本的には認めるべきものである。しかしながら、前段で述べた通り、ほとんどの企業で、副業を禁止してきたことから、「副業解禁」などという言い方がされるわけである。

では、なぜ民間企業は副業を厭ってきたのか。判例上で副業を制限することが可能となるケースは、以下の4つとなる。①労務提供上の支障がある場合(長時間労働、精力の分散化)、②企業の情報漏洩のリスクがある場合、③会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、④競業により、企業の利益を害する場合。(これらのケースは厚生労働省が提示している就業規則の例文にも掲載されている。)こうしたリスクがあるために、企業は副業されることを否としてきた。ただ、公務員が副業禁止であることも影響してか、副業を禁止できるのは当たり前、「どんな内容で、どんな事情があっても、副業は絶対にダメ」というスタンスの経営者は大変多かったと思われる。そうしたことを鑑みると、ここ何年かの副業促進という流れは、基本的人権(憲法22条も基本的人権のひとつ)という観点からは健全化の方向だといえる。

ただ、逆に「行き過ぎた空気感」という嫌いもある。顧問先などでも、多くの経営者から「副業って、なんでも認めなければいけなくなったんでしょ」とよく尋ねられる。なにか労働者の言われた通りに受容しなければならないという空気感が方々で漂っているのである。もちろん、そのようなことはない。既述の通り、禁止、制限が許される4つのケースがあり、実はこれらはかなり広範囲の事案をカバーしているのだ。また、現行法では、副業を法的にしっかりとコントロールできていないという実情もある。例えば労働基準法では、労働時間は本業、副業それぞれのものを通算する必要があり、この通算時間が法定を超えたら、割増賃金を支払う必要がでてくるのだが、これを実現するためには、本業、副業がともに相手先の就業状況を把握することが要件となり、現実的には極めて困難である。

そもそも国を挙げての、この副業促進には、別のカラクリも見え隠れする。現在、雇用保険では65歳以上の高年齢労働者には、資格要件である労働時間について、本業、副業の通算制度を認めている。65歳というのは年金受給開始年齢である。つまり、できるだけ働いてもらい年金受給を抑制したいという思惑も、ややうがった見方かもしれないが、ありそうだ。
また、我が国は、ずっと副業禁止が当たり前で、諸外国に比べて「遅れている」という感覚をもっている方も多いと思うが、実は、ヨーロッパ諸国の方が、日本よりも兼業率は低い。
こうしたことから、副業に関しての正確な情報を持ちつつも、この「副業促進」の流れには、必ずしも率先して乗っかる必要はないと筆者は捉えている。ケースごとに是々非々で、冷静に対応をしていくことをお奨めする。