ライン&スタッフ組織

ライン組織とは、例えば事業部長の下に、3人の課長がいて、各課長の下に2人ずつ係長がいるというようにピラミッド型の形をとり、意思決定、業務命令の伝達を事業部長から課長に、そして課長からそれをブレークダウンして係長に伝えていくという組織である。典型的なのは官僚組織だが、多くの一般企業でも、原型としてはこのライン組織を採り入れているところが大半であると思われる。

ただ、ライン組織では、ライン長が意思決定をするのに一人で多くの情報を集めて判断をしていかなければならないという辛さがある。例えば事業部長は、自分の事業部全体の諸情報を収集して分析をするのは、大きな組織になればなるほど、負担大だ。ラインを通して情報収集をすればよいという考えもあるが、例えば課長から吸い上げた情報にバイアスが入ると正確な判断ができなくなる。ラインを通すと、どうしても、ほめられたい、あるいは怒られたくないという感情からこうしたバイアスは入りやすい。

こうしたことから、大きな組織では、ラインからあえて外し、客観的に情報収集、分析してライン長を補佐するという立場の「スタッフ職」を設けて、ライン&スタッフ組織を構成するとことも多い。例えば、事業部長の参謀として事業推進担当というポストを作り、ラインの課長とは一線を画していくというような場合、これにあたる。昔の海軍でいえば、司令長官というライン長に対しての参謀長がそれだ。

このスタッフ職は、決して意思決定はしない。あくまでもライン長が意思決定することをサポートするだけである。ただ、運用を間違えるとスタッフ職自らが下部ラインに対して業務命令を発信してしまうことにになる。情報はスタッフ職が一手に握っているので、そうなりかねないところがある。そうなると組織は混乱をきたす。運用は必ずしも容易ではない。すべてライン長の力量が問われるところである。ただ、使い方を上手くすれば、優れた意思決定能力が組織として身につけられる。

この考え方は規模の小さな中小企業でも、無関係な話ではない。社長の参謀役を設けることで組織の推進力を大いに高めることは可能になるかもしれない。その場合も、やはり参謀役が浮いてしまわないように、他のラインに認知させることができるようにすることがポイントとなり、結局は社長の組織に対するグリップ力が問われることになろう。