就職活動スタート

3月1日に、いよいよ企業の会社説明会やエントリーシート受付が解禁され、2016年の新卒採用に向けた就職活動がスタートした。昨年までは説明会の解禁は3年生の12月だったが、3年後期試験に支障を来すとして大学側から日本経団連に申し入れしていたことが実現した形である。面接のスタート時期も従来の4年生4月1日から8月1日に4カ月後ろ倒しになる。これにより学業という視点からは健全化が図られることになるが、当事者(企業の採用担当、および学生)からすると、従来に比べて短期間に選考しなければならないということで採用の仕方(就職活動の仕方)にも変化が求められることになる。杓子定規な対応では出遅れるということで、インターンシップ制度の活性化やOB訪問の復活などが取りざたされてきている。

労働市場はおおむね売り手市場になりつつある。有効求人倍率は昨年12月に1.15倍とバブル期以来の高い水準になってきている。新卒市場についても受給は逼迫してきており、昨年(15年卒)以上の売り手市場になることが予想される。

こうした環境下では、中堅・中小企業の採用活動はかなり厳しい展開になりそうだ。売り手市場であると学生はどうしても大企業中心に考え、中堅・中小企業に目を向けなくなる。そして選考期間が短くなるほど、会社の特長を学生にアピールする機会が減ってしまう。世の中には優良な中堅・中小企業が沢山あるが優秀な新卒人材をなかなか採用できないという現実は本当にもったいないことである。中堅・中小企業は新卒採用活動について戦略的な対応をしていくべきである。

学生の行きたい企業ランキングは、必ずしも企業の本当の実力を投影していない。どうしてもイメージ先行で、知名度の高い会社に人気が集まりやすい。これは古今東西変わらないことだ。日経新聞を長年読んできていれば「財務的に見て、どうしてこんな会社に行きたいのか」と思えるようなところも結構入っている。また、有名な大企業といえども労働条件が健全とは限らない。「隠れブラック企業」がかなり混じっている。

優良な中堅・中小企業が採用活動で勝機をつかむには、この点をつくことだ。つまり、自社が大企業に比較しても①財務力、収益力が優れていること、②労働条件が秀でてていること、の2点についてセットで大学生に訴えることである。この2点に相関関係があることは言うまでもない。その相関関係も含めて伝えることがポイントだ。(求職者が結局のところ気にする点、突き詰めれば「潰れないか」と「労働条件が良いか」である。)こうした情報を伝えることで学生に何が正しいかについて覚醒させるのである。また自社のこうした情報を積極的に公開することにより、学生に対して、信用性、誠実性もアピールができる。ただし、こうしたことは財務、労働条件ともに本当に実力のある会社のみが該当するわけであるが。