一般的にいえば、労働組合は以前当コラムで採りあげた″ゲマインシャフト″的な要素を色濃くもつ組織である。労働組合は、その構成員である組合員の雇用を守り、労働条件を向上させることがその存在の目的としている。それはまさに構成員一人一人のためのものであり、共同体組織=ゲマインシャフトの典型ということもいえるだろう。
企業内労組の場合、ときにより労組は機能体組織のような振る舞いをすることがある。企業の上に乗っかった形で成り立っている組織であるので、会社という機能体に付随する部分があり、例えば「会社が無くなったら、労組も無くなる」という発想で物事を組み立てていくと、構成員のための共同体組織という性質はあまり表に出してこないこともある。このように振舞われると、会社側の労務担当も、機能体組織としての会社の論理の延長線で、労使間論議が進んでいるかのような錯覚に陥ってしまうことがある。
しかし、たとえ企業内労組であっても、労組は、最終的には全組合員の意思というものを基礎として、決議判断をする。だから意思決定スピードは機能体組織である会社側に比べれば著しくスローなものとなる。また組合組織のために組合員を犠牲にするような判断は労組として自家撞着を招くこととなるのでありえないこととなる。
労働組合もそのあり方が問われて久しいわけで、中には極めて機能体組織=ゲゼルシャフト化したところもでてきているかもしれない。でも、やはり労働組合のリーゾンデートル(存在価値)からしてゲマインシャフト的要素を完全に排除することなどはできないはずである。労働組合は原則として構成員である組合員の総意があり、労務担当は、そうしたことをしっかりと認識して労働組合と当たるべきである。もし組合が機能体組織だと勘違いをして交渉に挑むようなことがあると、そのギャップから手痛い目に遭うこととなる。是非とも注意をされたい。