古い組織と新しい組織⑦

組織全体での技術不足という着眼点でいえば、もうひとつのテーマは、「組織としての知識不足」ということがあろう。

組織は社会の中に存在する以上、社会が決めた様々なルールに従って運営していかなければならない。このルールを知らないと、損をすることもあるだろうし、ときには罰を与えられることすらありえる。例えば、通常の企業組織で考えてみれば、私人としての一般ルールである民法、設立登記、会計、会社組織を規定した商法、会社法、税務に関する法人税法、雇用・労務に関わる労働法、知的財産にまつわる諸法律、その業界を規定する各種業法、その他様々な法律があり、それらをしっかりと知っておかなければ、安定的に企業運営をしていくことはできない。

また、組織がその目的を効率的、効果的に果たすためのスキルを上げるための知識もある。例えば、これも企業組織に当てはめてみるとマーケティングの知識などがあてはまる。マーケティングもただ闇雲に推し進めれば良いというものではない。一定のマーケティング理論をしっかりと習得し、それに基づいて推進した方が遥かに良いパフォーマンスが生まれよう。生産技術などについても同様である。知識を習得した上での方が、当然技術力はアップする。経営学や情報システムの知識などについても組織運営をスムーズに行うためには必要な知識であろう。

これらは組織に携わる個々の構成員が吸収し、それを使っていきながら、確実に知識を組織内に定着させていくということができる。しかし新しい組織では人的リソースが不足しておりそれを十分に果たしづらい状態である。人数が少なく分業体制が十分に整っていないことが多いため、専門的な知識やスキルを溜め込むことができづらい。また、急成長をし外部より専門的知識を持った人間を積極的に採用していきながらこれを補っていこうというのが普通のプロセスだと思うが、いくら優秀な人間を多数取り込んだとしても、時間的に日が浅い状態であっては、それらの知識が組織全体として有機的に結びついたものになっていないので、パフォーマンスを出すことができないのである。これは時間を経て、構成員同士が相当量の情報を交換していく中、徐々に組織として熟成していくものなのである。