古い組織についてはいろいろと書いたが、新しい組織についての言及がまだほとんどされていないので、ここからしばらくは新しい組織について考察していく。
そもそも組織とはどのように誕生するのか。これについては、近代組織論の始祖であるバーナード(※)が「協働体系」という概念を用いて説明した。つまり、「組織とは、2人以上の人間が意識的に集まって、一定の目的を達成しようと協働関係をもった協働体系である」とし、協同体系を維持するための要素として、①共通目的、②貢献意欲、③メンバー間のコミュニケーション、の3つが必要となる、という考え方の整理をしている。これにある通り、組織は1人では発足できない。最低2人以上の人間が集まり、何らかの形で前述した3つの要素を意識していくわけだ。当然、組織発足時には、共通目的は明確であり、参加者の貢献意欲も高く、意思疎通もスムーズであろう。これが新しい組織の大きな強みである。特に発足当時の構成メンバーのままであれば、共通目的を強く理解しているので、それに向けてパワーをもって取り組むことができる。
しかしながら、新しい組織では、この協同体系を維持するための技術が身についていないということも実情としてある。技術としては、リーダーに求められるものと、構成員、組織全体に求められるものとがある。次回以降この技術不足の例を挙げながら新しい組織の課題について考えていく。
※ C.I. バーナード
アメリカの実業家。自分が社長であったときの経験を基に、経営組織についての思想を「経営者の役割」という著書の中で体系化した。これが、この考えをH.A.サイモンが受け継いでいき、バーナード・サイモン理論として近代組織論の礎となっていく。