わが国の人口がピークアウトしてだいぶ時間が経った。よく戦後復興期の経済成長は「奇跡」と言われてきましたが、これは戦後における「人口ボーナス」現象であると、今日的には説明されている。人口ボーナスとは、出生率の低下により、総人口に占める労働力年齢人口割合が高い状態のことを指す。戦後のベビーブーマー(いわゆる団塊の世代)が労働力として機能しだす昭和30年代後半から40年代にかけてがまさに人口ボーナスのピークであり、それが高度経済成長期とぴったり重なる。
そして、この総人口に占める労働力年齢人口割合は、団塊の世代が労働力とはなり得なくなったことで、著しく低下をしてきた。まさに昭和中期とは真逆の状態だ。これが令和の時代の現状である。こうした時代では、労働力人口をどうやって維持するかが重要となる。従来のように手なりでは減る一方だ。一般的に言えば、この新たな労働力創出は、高齢者、専業主婦、外国人、障害者といった属性グループの人々を積極活用するということになる。国もこれに向けては様々な策を講じてきている。
この中で、一番有用なグループは、何といっても高齢者。過去で蓄積した経験・スキルがあり、モチベーションさえ維持されれば、重要な戦力になりうる。以前は体力的な問題が指摘されてきたが、医療の進化や健康への意識の高まりなどで、今の高齢者は、昔と違って十二分に元気だ。筆者自身も還暦を超えたが、まだ当分普通に働けるという実感がある。
ただ、高齢者の労働力を活用する上で、ひとつネックとなるのが、組織内での役職上の上下関係。組織の新陳代謝を図るためにも、高齢者が管理職ポストに居座るようなことは芳しくないのは当然で、そのために若い世代が管理職になっていくというのは、どの企業でも当たり前の状況となってきている。その際には、かつての上司だった高齢者が部下になるという現象が生じる。欧米人のメンタリティであれば、年齢に対する上下関係の意識は薄く、この点はあまり問題にならないようだが、儒教の影響を受けた我が国では、どうしても「長幼の序」という意識が染みついている。「今はそんな時代ではないでしょ」という意見もあるかもしれないが、今でも、特に地方では、家長制の名残のような感覚があり、例えば長男が墓を守る、なんていうことも、まだ根付いているのではないだろうか。弊所の顧問先でも、現業職的な職域では、高齢者の部下から若い上司がパワハラを受けたといったことが起きている。こうしたことを克服することは、これから先の国力維持のためには非常に重要なテーマとなる。若手の上司、高齢者の部下、双方で理性的な態度、振る舞いが求められる。こうした着眼点をもった高齢者向け職能教育もこれからは必要になってくるのではないだろうか。



