標準化政策

 組織の標準化政策は、一定規模となった企業には、不可欠である。標準化政策をビルトインしていかないと、業容の拡大は一定のところでストップしてしまうだろう。経営政策の検討を進めるツールのひとつとして、経営合理化の「3S」というものがある。専門化(Specialization)、単純化(simplification)、標準化(standardization)の頭文字をとって3Sである。経営効率を高めるには、職能を分業して専門化を図り、行うべき業務はできるだけ簡単に実行できるように単純化をし、そしてその業務内容を標準化していくというのが、組織の業務改善、業務改革を進める上での基本セオリーとなるものだ。このうち、専門化と単純化については、比較的に大きな抵抗もなく取り組みを進めていけることが多いものの、「標準化」の段階で躓いてしまうということが往々にしてある。
 躓きの原因の一番は、文書化、マニュアル化に対する抵抗感であろう。専門性の高い職人気質の者ほど、マニュアル化ということについては、嫌悪感を覚えるのが世の常だ。確かに高度な職能、技能、技術を、いきなり精緻に文書で表現するということは、とてもハードルが高いことだと思う。しかし、その職能に関する仕事の内容自体や進め方、ということであれば、どんな職域でも、マニュアルにしていくことは十分に可能なはずだ。また、技能や技術についても、ある程度基礎的なことは文書にすることができるだろう。いきなり完璧なものを作り上げよというつもりはない。まずは、ある程度簡易なものからスタートしていき、時間をかけて精度を高めていくというスタンスで、取り組んでいくことで、かなり高度な技能でも正確な表現にしていくことは不可能ではない。いずれにせよ、初めの一歩を踏み出さない限りは、実現は不可能なので、そのことをよく意識してもらう必要があろう。
ところで、標準化政策の検討を進める目的として、タテとヨコがある。ここでいうタテは、時間系列のことだ。つまり、仕事の進め方や技能に関して、過去から未来に伝承していくための標準化である。もちろん、技術の進歩や環境の変化に伴い、内容が変わっていくことは当然出てくるわけで、その場合には、その変化する内容をしっかりとマニュアルに落とし込む。こうしていくことで、時間を経ても組織としての生産性を高次元で安定化させることが可能となる。
一方、ヨコは、空間的展開での標準化についてである。例えば、地域別事業部制を敷いている組織であれば、各事業部において、共通部分の職能と、事業部ごとの職能がある。後者については、それぞれの事業部ごとに、仕事の進め方をローカル組織において(タテの標準化政策として)検討していくことになるが、前者の共通部分については、全社の中で標準化政策を検討していく必要がある。ここについては、中央の経営企画部など(前項で述べたところの「全社の統合部門」)が、コントロールしていくことになる。
いずれにしても、標準化政策を進めるには、スタッフレベルでいくら懸命に取り組んでみたとしても、経営トップの理解がないと頓挫することは必定である。まずは、経営トップがなぜこの政策が必要であるのかについて深く理解することが、成功に向けての最大の鍵となろう。