毘沙門天

正式名称は善国寺という。昔から神楽坂のランドマークである。毘沙門様の愛称で呼ばれている。最近では、倉本聡脚本ドラマ「拝啓父上様」で神楽坂がロケ地となったときに、頻繁にアングルの中に登場していた。牛込見附(飯田橋駅西口)方面から、神楽坂を上がってきて、ちょうど登りきったあたりに位置する。夏に行われるほうずき市は、このお寺を中心に屋台が軒を連ねる神楽坂年中行事最大のイベントである。

以前はこの毘沙門様の横に田原屋という洋食レストランがあった。明治時代には、夏目漱石、泉鏡花、山田美妙といった文化人たちがよく訪れたということが、店のリーフレットに書かれていたことを覚えている。ポタージュスープがとても美味く、これだけを飲みに来るお客もいたと聞く。レトロな中に気品あふれる店の雰囲気で、子供心にとても贅沢な気分が味わえた。今は「関」というふぐ料理の店になっている。時代の変遷を感じざるを得ない。