ゲマインシャフトとゲゼルシャフト①

「ゲマインシャフト」「ゲゼルシャフト」はドイツの社会学者テンニースが提唱した概念である。これはベンチャー企業が創業期に会社をどう成長させるかを考える際に知っておくべき捉え方なので紹介する。堺屋太一は、ゲマインシャフトを共同体組織、ゲゼルシャフトを機能体組織と訳しているが、とてもフィット感があるので、本稿でもこの表現を使いたい。

ゲマインシャフト=共同体組織は、構成員一人ひとりのために存在する組織である。最小単位でとらえれば血縁組織があり、それ以外でも身近なところでは、町内会や自治会、PTA、教会・寺院等宗教団体、学校のクラブ活動、出身校のOB組織、ゴルフ会員組織や茶道教室などスポーツや文化のサークル等がある。こうした組織では構成員の満足感を高めることが重要なテーマとなる。ゲマインシャフトでは運営上の方針を決する際に誰かひとりがそれに対して強く不満感を募らせ反対をした場合、その方針を決することはできない。満場一致の決定が条件となる。決定に持ち込むためには反対者を説得するか、それでなければ脱退をしてもらうかの選択肢しかない。

一方ゲゼルシャフト=機能体組織は、組織自体に目的があり、その目的を実現させるために人材やその他の資源を集め、役割分担や指揮命令系統の整備を行っていく。従って組織利益のためには構成員の犠牲が生じる場合もある。そして目的が消滅すれば必然的に組織としては解散することとなる。代表的なゲゼルシャフトは営利法人つまり通常の企業である。

ただし、すべての組織を、これは共同体、これは機能体といううように白黒つけてしまうことは正しくない。企業であってもゲマインシャフト的要素を持っているし、たとえば宗教団体などでは多分にゲゼルシャフト化しているものも多く見受けられる。そういった意味では若者が集まって創業したばかりのベンチャー企業などは、原則ゲゼルシャフトではあるが、いまだゲマインシャフト的な気分を有している組織だといえよう。