社長の選び方②

GEはご存知の通りエジソンを始祖にもつ百数十年の歴史を持つ伝統的企業だが、現在の世界最大のグローバル複合企業にしたのは1981年から20年間CEOを務めたジャック・ウエルチであることには論を待たないだろう。45歳の若さでCEOに就任したジャック・ウエルチは、多岐に分かれた事業部門を「業界ナンバー1・2戦略」により各業界の首位および2位となっている事業に集約するという事業再構築を行うことで強力に経営体質改善を行い、「20世紀最高の経営者」と称されることとなるが、彼自身最も心を砕き精力を注ぎ込んだ仕事に後継者選択があった。結果として自身がCEOに就任した年齢と同じ当時45歳のジェフリー・イメルトにバトンを渡すのだが、イメルトの就任後GEは更に業績を伸ばし、5年で売上60%増、利益ベースでは倍増をさせていることからも、その選択が正しかったのは明らかである。

ウエルチが後継者選択のために考えた二大要素は、①後継者の年齢、②パイプラインモデルとわれる人事システム、である。

後継者の年齢は、一言で言えば“若い”ことだ。事業を推し進めていくためには中長期的な視点で経営することが不可欠であり、そのためにはCEOの在位期間を長く設計する必要がある。しかしスタートが遅く70代のトップではいわゆる老害の可能性が出てきてしまう。従ってできるだけ若いうちにCEOにして長期的に経営をさせることが大きなポイントとなるわけだ。ウエルチ自身45歳でCEOに就任し20年間務め、65歳で退任しておりそのことを身をもて証明している。

もうひとつの要素の「パイプラインモデル」とは、端的に言うと、“リーダーシップは役職段階ごとに固有である”という考えに基づき、より高いパフォーマンスを発揮するために、それぞれの役職において何をすべきか”を具体的に示したものである。例えば、部長が事業部長になるための「要件」と事業部長が役員になるための「要件」は異なるということであり、従って、事業部長と役員とでは求められる働き方、リーダーシップの発揮の仕方が異なるということである。このモデルに従って上層段階にいくに従って候補を絞っていくのである。ウエルチはイメルトを選択する前の段階で23人の候補者に絞り込んだと言われている。これらの候補者はパイプラインモデルにより選抜をしていったのである。

パイプラインモデルが機能する背景には職務要件の整理とそれに基づく徹底した運用がある。つまり役職段階ごとのリーダーシップの質の違いを職務要件として見ていき、仕事ぶりが職務要件を満たしているか否かを厳格に評価し、満たせない人材は排除していくということである。これは「職務基準」というアメリカ型人事評価だからこそ可能だと言えなくはない。しかし、その発想自体は日本でも十分に活用することは可能だと考える。