社長の選び方①

組織にとって最大の人事マターは、トップの選択であるということは古今東西変わらないことであろう。豊臣政権が秀吉一代限りとなってしまったのは、指名していた後継者があまりにも幼少であったからであり、一方徳川政権が260余年続いたのは、将軍職として後継者の決定をシステム化していったことにある。企業にとっても社長職の後継をどうするかは企業永続(ゴーイングコンサーン)を考える上でもっとも重要なことだ。オーナー企業で子息に後を継がせたいという場合には「選択」は終了しているので、その子息が社長としての器を備えるべくどう育成するか(いわゆる帝王学)の問題になるわけだが、その問題は別の機会に論じるとして、ここでは後継者の選択という観点にクローズアップする。近頃は社長をヘッドハンティングしてくるといった話も聞くが、やはり社内から選ぶのが効率性、納得性ともに優れているはずである。

この社内からの選択方法は、中小企業と大企業では全く異なるといってよい。組織規模が大きくなるほど選択方法は複雑にならざるをえない。例えば100名程度の従業員数であれば、リーダーとして誰が向いているかは見渡せば相対的に判断することができる。目星をつけて暗黙の中でその者にポジションを与えていけば良い。

しかしながら企業規模が数千人となると単に見渡した限りではとても適任者を見分けることができない。この場合何らかの人事システムが必要となってくる。一般論的に考えれば、人事評価を通じて優秀とされるグループが構成され、このグループに入れた者に様々なポジション・機会を与え、その結果を見ながら判断をしていくこととなる。ただ、社長自身が全社員をフラットに見比べておらず、中間で「人事評価」という、ある意味で“他人の思惑”が入り込んでしまうので、どうしても選択基準がばらつき、もしかして社長自らの目で見れば選択するだろう対象者が洩れてしまうということにもなりかねない。選ばれる方からすれば、「結局出世は運次第」という見方になるのも否めないわけだ。このように規模が大きくなれば客観性を完全に担保しながらの選択は難しくなるが、それでも“ゆれ”を少なくするためには人事評価システムの精度アップが求められるところだ。

これが数万人、数十万人規模の企業になったら適任の後継者を選択することは至難の業ということになろう。しかしそれをシステム化したグローバル企業がある。それはGEだ。次回はGEの後継者選択論について触れていきたい。