人事部門のポジショニングは、企業規模によりかなりの差異がある。従業員数千人単位の大企業では人事部門は強い力を持つ場合が多い。特に大きな労働組合を抱える企業の場合、労務機能が重要となることから、社内でも一本目の人材を登用する。一方、企業規模が小さくなればなるほど人事は経理との比較の中で相対的に力が弱い。創業期の10名足らずの従業員数の会社の場合、人事機能は特に必要ない。いわゆる人事は社長が目配せをし、また採用や教育も社長や管理部長が自ら実行していく。給与計算などは管理部の経理セクションが抱えるか、あるいはアウトソーシングで対応する。一方、資金繰りを司る経理は創業当初から必要となる。従って創業時は社長の片腕となる管理部長は大概経理畑の人が就くこととなる。およそ経営管理はカネを中心に回ることとなる。従業員規模が少し大きくなり、経理以外の管理諸機能がいろいろと必要になってきた時点では総務部門が経理から独立することとなる。この段階ではまだ人事は総務部門の中のひとつのパートという位置づけである。総務的ルーティンワークに追われ、戦略的、企画的な仕事をするにはなかなか至らない。また労務などは給与計算中心なので経理の方に残っていたりもする。ただ採用はここの仕事として明確に認識されるようになる。また人事系の規程作りなども総務的ワークとしてではあるが携わるようになる。従業員が100名を越すと独立した人事部門が求められ始める。ここまで来ると、それまでは機能としてほとんど存在しなかった教育と労務が、日の目を見ることとなり、企画性を帯びた仕事内容になっていく。つまり業務の性質が変化していくわけだ。当然求められる人材も異なってくる。規模が小さいうちは間違えのないルーティンがしかりできる事務的能力が専ら必要だったが、一定規模となりいわゆる「人事」が企画部門として社内で見られるようになると戦略構築能力が俄然要り用になる。逆にこのステージにて人事部門が従来的ルーティンの延長としての業務内容であると、企業としてのその後の成長が期待しづらいこととなる。数百名規模の企業ではこの点が更なる成長を遂げられるかどうかの分岐点になるのである。