社長のポテンシャル

コンサルティングをしていて痛感するのが、小さな会社の業績は社長次第だということである。社長が優秀であると業績は堅調に推移するし、一方、その行動や言動を傍で観察していて、? マークが付くような社長であると、たまたま波に乗って1~2年は売上を伸ばせても、数年立つ間には業績は低迷をしていく。本当に業績の明暗は、社長のポテンシャルに関わるのである。それでは、業績を伸ばす社長のポテンシャルとは、どのようなものか。勿論、様々な要素があると思うが、これまでの、様々な社長とのお付き合いから、私として特に実感する要素として、次の3つを挙げたい。

ひとつは、「聴く力」である。どんな優秀な経営者でも、オールマイティな知識やスキルは持ち得ない。外部から補いをしていく必要がある。例えば税理士や社労士、経営コンサルタントなどから情報を得ることは、日常、最も身近な中で、手軽にできることだ。社労士、人事コンサルタントの仕事をしていると、この「聴き方、情報の取り方」で、社長のポテンシャルは一目瞭然となる。優秀な社長は、自分が分からないことは分からないということを、こちらに伝え、その上で説明を求める。決して、知ったかぶりはしない。そのようなスタンスで、物事を聴いてくれると、「この人は、ここまで理解していて、ここが不理解なんだ」ということを押さえながら、その不足点を具体的に説明することが可能になるので、非常に効率的に伝達できる。聴く側も、不明な点が少しずつ払拭できていくので、スピードをもって全体像を理解することができる。こうした「聴く力」は、結局のところ、経営の効率アップにつながっていくわけである。

二つ目として挙げたいのは、会社組織メンバーとの「コミュニケーション量」である。優秀な社長を見ていると、部下とのコミュニケーションを常に取り続けている。会話によるものの他、メールでのやり取りも頻繁に行う。これは、常に情報の共有化を図ろうという意思の表れなのだと思う。部下からすれば、「社長は、常に自分のことを理解してくれている」と思わせるとともに、「だからこそ、手を抜くことができない」という緊張感を、恒常的に持たせることに成功しているわけである。

そして、3つ目。それは、決断から行動に移すまでのスピードだ。これは決して決断自体の速さではない。決断、判断をする際には、事案によっては当然時間がかかることもあるだろう。拙速な判断をして、会社をダメにすることのないよう、熟考することは、経営者として時には必要なことである。ただし、一旦決断したら、そのあとは一刻も早く、的確な方法をもって行動していくことができなければ、競争社会でアドバンテージはとれない。優秀な社長は、決断後の行動にスピード感がある。自分自身が率先して行動していく。いわゆる「フットワーク」が良いのだ。

以上で述べた3つの要素を全て持ち得ている社長は滅多にいないだろう。ただ、このうち、私の周りを見渡して、どれか2つでも持っている方については、相当に充分なパフォーマンスを発揮しているように見受けられる。