企業内組合もお家意識が背景に

企業内組合という組織形態も、日本独自のものだ。諸外国では、労働組合は産業別、職種別に構成するのに対して、我が国の労働組合は、原則として企業単位で組織作りを行う。勿論、上部団体として、産別組織があるわけであるが、産別組織はあくまでも第二義的な存在であり、物事を考える上では、単組、つまり企業内組合が最優先させる。実はこの企業内組合も、前項で述べた企業=お家という意識に基づくところが大きい。忠臣蔵がそうであるようにお家の存続というのは藩組織にとって最重要なテーマであった。同様に企業についても、その存続させることがとても重要なテーマとなる。
「何だ。そんなのどこの国でも当たり前だろう」と言われるかもしれない。たしかに、企業のGoing Concern(事業継続)は、グローバルな視点で見ても重要なテーマであることに疑いはない。ただ、それは経営としての問題であって、労働者がどこまでそうした意識を持つかについては、別である。欧米では、一定の雇用の流動性が確保される中で、必ずしも一企業に拘る勤め方はしない。むしろ、企業を渡り歩きステップアップしていくのが、特にホワイトカラーでは一般的だ。一方、我が国では、労働者が今所属する自分の企業を永続させたいと捉える傾向が強い。自分の企業のことを「うちでは」という言い方を、皆が当たり前にするのもそうした意識に基づく。
こうした捉え方の中で見ていった場合、若い世代については、これから30年先まで企業存続させるため、旧世代である現経営執行部の役員たちに物申す必要が出てくる。というのも、現経営執行部は、“現在“の業績が重要であることから、時に未来に残すべき経営資源を先食いする可能性があるからだ。(この問題は、国レベルで言う年金問題と同様だ)また、加齢とともに感度が鈍くなっている旧世代の経営陣は、世の中のトレンドに逆らうような経営判断をするかもしれない。そうした旧世代の判断に引きずられると、経営悪化を呼び、若い世代は、現在としての労働条件が低下するだけでなく、未来へ向けての企業存続を危ぶませることになりかねない。だから、若い世代の物申すための手段として、”企業内”に労働組合を作って旧世代の経営陣に対抗する力を得るわけである。我が国の企業内組合全てが、こうした捉え方をしているわけではないかもしれないが、企業内組合の多くは、こうした考え方を動機として活動していると思われる。
このように考えてくると、やはり従来からの企業内組合は、終身雇用制と年功序列をベースとした存在であり、年功序列の負の部分を補うための存在として機能してきたのである。